2012 年 10 月 22 日の記事

ロンドン雑感:最後の週末にARの実験

Posted by kiri on 2012 年 10 月 22 日
GIS, ロンドン, 地図 / No Comments

ほぼ2ヶ月の英国滞在も今週で終わり。最後の週末だった今日(こちらはまだ日曜の夜)は、最近はまっているARでちょっとした実験をしてきた。

前回の記事で、CityEngineで作ったモデルをARとして表示して、位置情報付きのAR表示を実験して失敗した。でも、よく確認すると、AR-media Playerの使い方が間違っていたようで、GPSのないWiFiモデルのiPadでも位置情報付きのARモデルを表示できることがわかった。そこで、当初考えていたものを、ロンドンにいるうちに実験してみた次第。

考えていたものというのは、3次元的な地図(都市モデルのようなものではなくて、通常の主題図を3次元化したもの)を、見晴らしのいい場所からARで表示するというもの。もしAR-media Playerでうまく表示できると、例えば、巡検や学校の遠足などで街を見下ろすことのできる展望台などに行ったときに、ARを使って実際の景色と主題図を重ね合わせるというようなことができる。単に手元の紙地図やデジタル地図で見るよりも、実際の景色と重ね合わせることができると、よりわかりやすくなりそうに思うので、今回の実験をしてみた。

ロンドンの街を見下ろせる場所としては、例えばグリニッジ(天文台のあるところ。都心部は見えないが、再開発地域のドックランズがよく見える)とか、ハムステッド・ヒース(ロンドン北部の公園)などがあるが、今回はロンドンの友人から教えてもらった場所を選んだ。その場所は、テムズ川右岸(南)にある美術館、テート・モダンにあるレストラン。一部はカフェになっていて、そこから対岸のシティ(都心部)がよく見える。

テート・モダンから見たシティ方面の景色

テート・モダンから見たシティ方面の景色

少し寝坊したけれど、11時過ぎに到着。運良くそんなに混んでおらず、比較的よい場所が確保できた。コーヒーを頼んで早速実験。

ARの実験

ARの実験

こんな感じになりました。この図(モデル)が何を表示しているかというと、ロンドンの小地域(大きさは日本の小学校区ぐらい)別の所得のデータで、モデルの高さは所得の少なさ(ややこしいけれど、元データがそういう数値になっている)を示し、赤は所得が低い地域、青は所得が高い地域、緑はその中間になる。このデータについては後日記事にします。この画像では、諸般の事情があって、モデルは多少動かしてあるけれど、完成予想には近い雰囲気になった。少し失敗だったのは、一部のモデルが透過し過ぎてしまって、正面のセント・ポール大聖堂のあたりにうっすら写っていて、心霊写真のような感じになってしまったこと。これはモデルを作る段階での失敗。

もう一つ大きな失敗があって、これはモデルを動かした原因でもあるのだけれど、iPadのコンパスがうまく動作せず、テート・モダンからセント・ポールに向かって(北方向)、iPadを置いていたのに、コンパスは左向きになってしまっていた(画像では確認しにくいが、iPad画面上のテムズ川の向きと実際のテムズ川が直交している)。なので、iPadをセント・ポール方向に向けても、表示されるARのモデルは、テート・モダンから西に向いたときに見えるべきものになっていた。

iPadのコンパスの向きと実際の向き

iPadのコンパスの向きと実際の向き

ごく簡単な実験だったけれど、今後のヒントになりそうなことがいくつか。

  1. iPadはGPSつきのモデルのほうが正確に利用できる。WiFiモデルでも、コンパスが正確なときがあるが、そうでないときもある。いちいち調整するのは面倒なので、実用上は、GPSつきモデルを使うほうがいいだろう。23日(英国時間夕方)に発表されるであろうiPad miniにGPSが搭載されていれば使えるだろう。
  2. テート・モダンぐらいの高さからだと、地平線が近いこともあり、表示されるARモデルはかなり高い位置になってしまう。例えば山の上とか、かなり高いタワー(しかし、ロンドンには公開されている展望台が少ない)からであればもう少し見やすい感じになるような気がする。
  3. GISデータをそのままSketchUpに読み込むのは少し面倒で、今回の方法(詳細は省略)では、気軽にいろいろと地図を作ることができるようなものではない。ArcGISからSketchUpのモデルとして出力するまでの中間的なツールの開発もしたほうがよさそうだ。

というわけで、ARについてはもう少し実験してみる予定。経過はここで紹介していきます。