2012 年 12 月 13 日の記事

ArcGIS Online 組織向けプランの感想②Esri Maps for Office

Posted by kiri on 2012 年 12 月 13 日
GIS, Web, 地図 / No Comments

まだ組織向けアカウントの期限が切れていないようなので、Esri Maps for Officeの感想を少々。

Esri Maps for Officeというのは、ExcelとPowerPoint向けのプラグインで、ワークシートに地図を追加したり、シート上のデータを地図上に表示させたり、スライドに地図を追加したりすることができる。Excel上で利用できるので、GISソフトがなくても地図表示を中心とする簡易GISのような使い方ができる。また、PowerPointでは、ネット環境さえあれば、プレゼンのときに地図を見せたり、気になれば属性も表示させたりすることができる。便利そうではあるが、これも、利用するには組織向けアカウントが必要になる。とりあえず使ってみたい人は30日の無料トライアルを(なんか宣伝してるみたいだ(笑))。

今回は、Excel上のEsri Mapsについて少し。

Esri Mapsで地図を表示した状態

Esri Mapsで地図を表示した状態

画像のように、Excel上に地図を載せることができる。もちろん、Excelデータの情報を、地図上に表示することもできる。地図上に表示するには、位置情報や住所データが必要になる。位置情報については、経緯度しか対応していないようなので、平面直角座標系などの座標値は使えない。住所データについては、日本の住所でもジオコーディングに対応しているので、町丁や番地レベルの情報が含まれた住所データであれば通常は問題なくジオコーディングできる。

前回の記事の関連で、今回はiタウンページから石川県加賀市の温泉旅館の住所リストを作って、ジオコーディングしてみた。重複を消したりして作成した53件のデータのうち、ジオコーディングに成功したのは22件で、31件はエラーになった。

ジオコーディングの結果

ジオコーディングの結果

ジオコーディングの精度が悪いのは、基本的にはデータの問題のような気がするが、タウンページで使用されている表記ぐらいには対応してほしいところ。今回のデータのうち、「成功」となったデータのほとんどは山代温泉のもので、山中温泉や片山津温泉の旅館のデータはジオコーディングできなかった。ちなみにGoogleマップでは正しい場所が表示されるものもあるので、ジオコーディング側(住所認識のシステムや住所データ)で対応できる問題のように思う。○○町1丁目1-1のような住所ならジオコーディングしやすいと思うので、大都市(住所体系の複雑な京都は除く)のデータがほとんど、という場合には問題にはならないかもしれない。

また、「成功」の意味は少し怪しく、多少間違っていても認識できたものは「成功」になっているようで、いくつかのデータは間違った場所にポイントされている。CSISのアドレスマッチングサービスのように、認識のレベルや精度が同時に利用できると正確さが判断できるので便利だろう。

もう一つ問題。画像にあるとおり、ジオコーディング結果にエラーがあると、「エラーの修正」という文字が表示され、クリックできるようになっている。しかし、エラーの修正自体は、地図上でできるわけではないようで(例えば間違った位置にあるポイントをドラッグして修正したり、認識できなかったデータを地図上にプロットしたりということはできない)、Excelのシート上の住所列の値を修正したうえで、ジオコーディングする必要がある。ただし、どこまで認識できているかはユーザー側に提示されていないので、どう直せばエラーなくジオコーディングができるのかはわからない。この点はできれば改善してほしい気がするが、そこまでするとちゃんとしたGISになってきてしまうかもしれない。

なお、ジオコーディングに際しては、ArcGIS Onlineで公開されているor自分の組織が公開しているフィーチャサービスを利用してテーブル結合することもできる。この場合は、住所情報でなくても、コードのようなものを使って地図上にデータを表示することができる。

さて、地図化に「成功」したデータについては、色分けなどができる。個別にアイコンを設定したり、自然分類などで色分けすることはできるが、階級区分のしきい値をキリのいい数字に変えるようなことはできない。ポイントデータをクラスターで表示したり、ヒートマップ(密度のラスタ)として表示したりすることもできる。ヒートマップは簡単に作成できるし、縮尺の変更に合わせて再計算されるので、けっこう便利かもしれない。

ヒートマップ(一部の位置は間違っている)

ヒートマップ(一部の位置は間違っている)

高度なGIS操作を求める人には物足りないと思うが、ごく手軽に地図化してみたい、という人であればEsri Maps for Officeはお試し版としていいかもしれない。